テールランプ

2005年8月4日
夜、ヤツが来た。

ちょっとだけ会おうと言っていたものの、いつ来るんだろうと思ってたらインターホンが鳴る。

どこにも行かず、ただ部屋で喋る。



阪神戦を観ながら喋る。

今岡が満塁ホームランを打った。

最高だ。



話の内容は本当、他愛もない、近況報告。

「実は、髪切ってん」

目ざといと言われつづけて来た俺は全く気付いてなかったことにショックを受けた。

毛布に包まり、体を丸めて寝転がる姿を見て、急に髪に触れたくなり、頭を撫でる。

そしてまたマッサージが始まる。

頭から首、肩、背中、腰から足へ。

交代して俺も少しだけしてもらう。

でも、俺はマッサージをする方が好きだ。

起き上がって、テレビを見ながら、ヤツを後ろから抱え込んで、またマッサージ。

今日はおかしい。

急に抱きしめたくなり、「抱きしめていいかな?」と言った。

返事を待たず、後ろから抱きしめる。

「何してんだろ」と思いつつも、落ち着いてる自分に気付く。

しかし、体は落ち着いてはいられない。

髪をよけ、首から背中に舌を這わせる。

吐息が漏れる。

久しぶりにヤツのこの声を聞いた。

片手で手を持ち、もう片方は胸に宛がう。

悶える姿を冷静に見れてしまう。

なんて悲しいんだ、と思いながら手を放す。

怒るかな、と思ってたが、表面上は普通だった。「どうしよう」といった感じ。久しぶりにドキドキ感が伝わってきた。



次の日、仕事があるヤツを駐車場まで見送る。

そこで、少し仕事の話をした。

「異動が頻繁にある仕事だし、噂では夏から秋にかけて大異動があるかもってチラッと聞いたし、凹んでるんだよね」

「もともと、異動なんて大歓迎と思って入ったけど、最初の配属地がここっていうのが予想外だったかな」

今年でここに住み始めて5年目なのだ。次こそはここに戻ってくることはないと思う。

と、いろいろ考えてたことを口にした。

でも、「もっと○○といたいんだ」とは言わなかった。いや、言えなかったのかも。

何でだろう?怖いから?ていうか、2人の関係ってそんな雰囲気じゃない気がしてるから。

知りすぎて、踏み込みすぎてしまったんだ。

「次、会えるかな?」お互いそう言いあって、エンジンがかかる。

窓越しに見える手を振りながらの笑顔はいつもと変わらない。

自然とこっちまで笑顔になる。

車道に出て走って行く車のテールランプを何気なく眺める。

ふと「もしかしたら最後なんてわけないよな」と思いながら。

また心を乱されてしまったんだ。

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